決算がくると財務諸表を作らなければならない

建設業許可申請や変更届を提出するときには、一番最近の決算についての財務諸表(ざいむしょひょう)を提出しなければなりません。

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例外は事業を始めてからまだ一度も決算を迎えていないケースです。その場合には開始貸借対照表というシンプルな書面を1枚付けるだけです。一般に建設業の手続きで提出する財務諸表は、次のとおりです。

 

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提出する財務諸表について

■貸借対照表
■損益計算書
完成工事原価報告書
■株主資本等変動計算書(法人)
■注記表

確定申告を経験したことのある方や経理を経験したことのある方以外はあまり馴染みのある書類ではありませんね。一般には「決算書」と言われているものがこれに当たります。

 

 

貸借対照表について

貸借対照表は、決算日の時点で手元にあるプラスの財産、マイナスの財産、プラスの財産からマイナスの財産をひいた正味の財産、以上の3種類を項目別に整理して書き記された書類です。ここでは、建設業界に特有の項目(科目)についてご紹介していきます。

 

 ・完成工事未収入金(資産):完成工事高に計上した請負金額のうち未だ回収できていないもの

 ・未成工事支出金(資産):完成工事高に計上していない工事について支出した費用

 ・材料貯蔵品(資産):使われていないためまだ費用にあがっていないが手元にある、工事用の材料、消耗品、工具備品、事務用品など

 ・建設仮勘定(資産):工事中の自家用の固定資産のために支払った費用

 ・機械運搬具、工具器具備品(資産):建設機械、車両、耐用年数が1年以上の工具や小さな機械 

 ・工事未払金(負債):完成工事高に計上した工事に支出した費用うち支払いが済んでいないもの

 ・未成工事受入金(負債):完成工事高に計上していない請負金額のうち先に受領したしたもの

 

建設業に特有の資産はざっとこのような科目があります。貸借対照表の資産である、未成工事支出金に入れた支出は、決算をした期中には費用になっていません。支出した現場を完成工事高として計上していないためです。その現場が完成工事として処理したときに、資産から損益計算書の完成工事原価に振り替えられて、費用になります。

貸借対照表の負債である、未成工事受入金に入れた収入は、決算をした期中には完成工事高にも費用にもなっていません。その現場が完成工事として処理したときに、負債から損益計算書の完成工事高と完成工事原価に振り替えられます。

収益の計算基準は、工事完成基準と工事進行基準の2つがありますが、一般的なのは工事完成基準です。工事が完成した時をもって、売り上げと費用を計上します。完成前に受け取ったり、支払ったりしたものについては、貸借対照表の未成工事の科目に入れておいて後で処理をしています。

決算期をまたいで注文された仕事が完了することは、建設業によくあります。そこで上記のような勘定科目が必要となります。

 

 

損益計算書について

損益計算書とは、1会計期間の「収益」「費用」「利益」を明らかにし、企業の経営成績を確認するための書類です。

■収益:売上高、営業外収益、特別利益
 (売上高について、建設業では「完成工事高」「兼業事業売上高」の項目で計上します。) 

■費用:売上原価、販売費および一般管理費、営業外費用、特別損失、税金
 (売上原価について、建設業では「完成工事原価」「兼業事業売上原価」の項目で計上します。) 

■利益:売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、当期純利益

 

 

完成工事高から除外する兼業売上高となる業務とは?

例えば内容が除草であっても工事で発注されているケースがあります。許可行政庁によって判断が分かれるかもしれませんが、私は完成工事高から除外するものと考えます。そして次の業務については、どの許可行政庁でも工事にあたらないと定義されていると思います。

 

保守点検、維持管理、除草、草刈、伐採、除雪、融雪剤散布、測量、地質調査、樹木の剪定、庭木の管理、造林、採石、調査目的のボーリング、施肥等の造園管理業務、造船、機械器具製造・修理、建設機械の賃貸、宅地建物取引、建売住宅の販売、浄化槽清掃、ボイラー洗浄、側溝清掃、コンサルタント、設計、リース、資材の販売、機械・資材の運搬、保守・点検・管理業務等の委託業務、物品販売、清掃など。現状の経審のルールでは工事と兼業に振り分けていくことになります。

 

 

 

株主資本等変動計算書とは

株主資本等変動計算書とは、事業年度における企業の純資産の変動を表すものです。事業活動を経てどのように増減したのか、そして株主に支払い等を行い最終的に純資産がいくらになったのかを報告するために作成する書類です。

 

 

注記表とは

決算書の補足情報を一覧にまとめた書類のことです。項目は次のとおりです。(注記表は自社が「株式譲渡制限会社」であるか、「公開会社」であるかにより記載を要する内容が異なります。)

 継続企業の前提に関する注記

 重要な会計方針に係る事項(連結注記表にあっては、連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項及び連結の範囲又は持分法の適用の範囲の変更)に関する注記

 会計方針の変更に関する注記

 表示方法の変更に関する注記

四の二 会計上の見積りに関する注記

 会計上の見積りの変更に関する注記

 誤謬の訂正に関する注記

 貸借対照表等に関する注記

 損益計算書に関する注記

 株主資本等変動計算書(連結注記表にあっては、連結株主資本等変動計算書)に関する注記

 税効果会計に関する注記

十一 リースにより使用する固定資産に関する注記

十二 金融商品に関する注記

十三 賃貸等不動産に関する注記

十四 持分法損益等に関する注記

十五 関連当事者との取引に関する注記

十六 一株当たり情報に関する注記

十七 重要な後発事象に関する注記

十八 連結配当規制適用会社に関する注記

十八の二 収益認識に関する注記

十九 その他の注記

 

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この記事を書いた人

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塩﨑 宏晃

2003年行政書士登録。
建設業許可・経営審査業務の実務経験19年。
行政書士業務を通じて現場で働く方の縁の下の力持ちとなることがモットーです。
近年は建設キャリアアップシステム、特定技能ビザにも取り組んでいます。
お客様は一人親方、サブコン、地方ゼネコン、上場メーカーなど様々。
毎年200社以上のお客様と直接お会いし、ご相談を承っています。
2023年から申請のオンライン化が本格スタートしますので、
これを機に遠方のお客様ともご縁を頂ければと考えております。