建設業者としての帳簿の備え付け義務

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目次

(1)対象書類について
(2)帳簿に記載すべき内容
(3)帳簿記載の注意事項について
(4)添付書類について
(5)営業に関する図書として保存義務があるもの
(6)帳簿保存義務違反の罰則について
(7)建設業法上違反となる行為の事例

 

建設業許可の新規の取得、経営業務管理責任者や専任技術者の交代、経営審査(経営規模等審査)のご相談の中で手続きがスムーズにいくかどうかの判断がもっとも問われるのが、以下にご案内する帳簿の備え付け義務です。
建設業許可も経営審査も、会社や個人の過去の経歴をまとめて役所に主張し評価をいただく制度です。過去の実績の裏付けをなくしては、お望みの利益を得ることができない仕組みになっています。当たり前のようで実践できていない企業様も多いかと思いますが、やっている所はしっかりとやっています。ぜひ実践をしていただきたいと思います。

建設業者は締結した請負契約の内容を帳簿として適切に整理し、一定期間は保存して管理しなければなりません。建設業法(第40条の3)で定められています。この帳簿の備え付け義務は民間工事であっても下請負人であっても同様です。
帳簿は目的物の引き渡し日から5年間、保存しなければなりません。さらに発注者と締結した住宅を新築する工事については10年間保存と、さらに長期となっております。営業上の帳簿に関する記載や保存等のルールが法律で定められているため、“知らなかった…”では済まされません。守らない場合には罰則が適用される可能性があります。しかし、帳簿の保存義務はすべての建設業者が対象ではなく、建設業許可を取得している建設業者が対象となります。

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対象書類について

(1)帳簿(記載事項等)
(2)帳簿の添付書類
(3)営業に関する図書

 

 

帳簿に記載すべき内容

1.営業所の代表者の⽒名及びその就任⽇

 

2.注⽂者と締結した建設⼯事の請負契約に関する以下の事項

(1)請け負った建設工事の名称、工事現場の所在地
(2)注文者との契約日
(3)注文者の商号、住所、許可番号
(4)注文者による完成を確認するための検査が完了した年月日
(5)当該建設工事の目的物の引渡しをした年月日

 

3.下請契約に関する事項

(1)下請負人に請け負わせた建設工事の名称、工事現場の所在地
(2)下請負人との契約日
(3)下請負人の商号、住所、許可番号
(4)建設工事の完成を確認するための検査を完了した年月日
(5)当該建設工事の目的物の引渡しを受けた年月日

 

 

帳簿記載の注意事項について

注意①

特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限りません。)となって⼀般建設業者(資本金が4,000万円以上の法人企業を除きます。)に建設工事を下請負した場合には、以下の事項についても記載が必要となります。
(1)支払った下請代金の額、支払った年月日及び支払手段
(2)支払手形を交付したときは、その手形の金額、交付年月日、手形の満期
(3)代金の⼀部を支払ったときは、その後の下請代金の支払残額
(4)遅延利息の額・支払日(下請負人から引き渡しの申出から50日を経過した場合に発生する遅延利息(年14.6%)の支払に係るもの)

 

注意②

発注者(宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業者を除きます。)と住宅を新築する建設工事の請負契約を締結した場合には、以下の事項についても記載が必要となります。
(1)当該住宅の床面積
(2)当該住宅の請負契約が、発注者と⼆以上の建設業者との間で締結された場合は、建設瑕疵負担割合
(2)当該住宅について、保険法人と住宅建設瑕疵担保責任保険契約を締結し、保険証券またはこれに代わるべき書面を発注者に交付しているときは、保険法人の名称

 

 

添付書類について

帳簿には、契約書若しくはその写し又はその電磁的記録を添付しなければなりません。

1.契約書又はその写し

 

2.特定建設業の許可を受けている者が注⽂者(元請⼯事に限らない。)となって⼀般建設業者(資本⾦が4,000万円以上の法⼈企業を除く。)に建設⼯事を下請負した場合には、下請代⾦の⽀払済額、⽀払った年⽉⽇及び⽀払⼿段を証明する書類(領収書等)⼜はその写し

 

3.建設業者が施⼯体制台帳を作成したときは(元請⼯事に限る。)、⼯事現場に据え付ける施⼯体制台帳の以下の部分。(⼯事完了後に施⼯体制台帳から必要な部分のみを抜粋します。)

(1)監理技術者の氏名と資格
(2)別に配置した専門技術者の氏名、担当工事、資格
(3)下請負人の名称、建設業許可
(4)下請負人に請け負わせた工事の内容及び工期
(5)下請負人が配置した主任技術者の氏名と資格
(6)別に配置した専門技術者の氏名、担当工事、資格
※書面の添付に代えてスキャナで読み取り記録し、当該営業所で表示する方法でも可

 

 

営業に関する図書として保存義務があるもの

1.完成図

完成工事の目的物の完成時の状況を表した完成図を作成した場合、または発注者から提供された場合

 

2.発注者との打ち合わせ記録(相互に交わされたもの)

打合せ(対面・電話等)が工事内容に関するもので、かつ、帳簿を発注者との間で相互に交付した場合

 

3.施工体系図(作成義務がある場合)

施工体系図を作成しなければならない作成建設業者は、重層化した下請構造の全体像が明らかになる施工体系図を保存しなければなりません

 

 

帳簿保存義務違反の罰則について

帳簿を備え付けていない、帳簿等に必要事項を記載していない、帳簿や図書の保存がされていない場合には10万円以下の罰金が科せられることになります。

 

 

建設業法上違反となる行為の事例

(1)建設業を営む営業所に帳簿及び添付書類が備付けられていなかった場合
(2)帳簿及び添付書類は備付けられていたが、5年間保存されていなかった場合
(3)発注者から直接請け負った建設工事の完成図等の営業に関する図書が、10年間保存されていなかった場合 ※平成20年11月28日以降に工事目的物の引渡しをしたものに限る。

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この記事を書いた人

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塩﨑 宏晃

2003年行政書士登録。
建設業許可・経営審査業務の実務経験19年。
行政書士業務を通じて現場で働く方の縁の下の力持ちとなることがモットーです。
近年は建設キャリアアップシステム、特定技能ビザにも取り組んでいます。
お客様は一人親方、サブコン、地方ゼネコン、上場メーカーなど様々。
毎年200社以上のお客様と直接お会いし、ご相談を承っています。
2023年から申請のオンライン化が本格スタートしますので、
これを機に遠方のお客様ともご縁を頂ければと考えております。