法令遵守の状況の評点に関係する監督処分とは

日頃、加点の対象について述べることが多いですが、今回は減点の対象となる監督処分の事例についてお伝えをしてきます。社会性等(W点)のうち法令遵守状況(W4)に関する内容です。まずは経審の全体像をかんたんにおさらいしましょう。

総合評定値(P点)の算出においてW点は15%のウエイトを占めています。「その他の社会性等(W点)」は、W1からW8まで項目があり、建設業者の社会貢献度が評価されます。

関連記事 W点全体の詳しい解説はこちらをご覧ください。

 

みそらくん

この記事を読むと次の内容がわかるようになるよ。

・法令遵守の状況(W4)について
・監督処分の種類について

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減点される評点の構成

W4法令遵守の状況による評点は次の3段階に分かれています。

処分を受けていない場合 → 0点
指示処分を受けた場合 → マイナス15点
営業の全部もしくは一部の停止を命ぜられた場合 → マイナス30点

以上のように、何もなければ減点なし、監督処分があると減点されるという構成です。処分には建設業許可の取り消しもあります。許可が取り消されてしまうと、経審を受けられなくなりますし、もちろん公共工事の受注もできなくなります。

そして、監督処分を受けているにもかかわらず、経審でその旨を申告せずに(処分の有無を無に)申請をすると、虚偽の申請と見なされ、更に監督処分を受ける可能性がありますのでご注意ください。

 

 

監督処分の種類

建設業者が建設業法やその業務に関して他の法令に違反すると建設業法の28条、29条に基づく監督処分の対象になります。監督処分には、監督行政庁による「指示処分」、「営業停止処分」、「許可取消処分」の3種類があります。基本的には不正行為等が故意または重過失によるときは原則として営業停止処分、その他の場合には原則として指示処分がされます。(情状により過重または減軽がされる場合があります。)
(中部地方整備局作成「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて」より一部転記しました)

 

指示処分

建設業者が建設業法に違反すると、監督行政庁による指示処分の対象になります。指示処分とは、法令違反や不適正な事実の是正のため、建設業者が具体的にとるべき措置を監督行政庁が命令するものです。監督行政庁とは、地方整備局長や都道府県知事のことです。営業はそのまま継続できますが、監督行政庁から命令された内容を実行し、報告しなければなりません。

指示処分の対象は、例えば次のように非常に身近に存在するミスです。

■定められた期限内に申請・届出を提出できなかった
■工事内容に応じた資格(国家資格や実務経験など)のある技術者を現場に配置しなかった

次も同じミスを犯さないようにするにはどうすれば良いのか?

その対策を考え、計画を立て、実行に移したことを文書で監督行政庁に報告します。

 

営業の停止

建設業者が指示処分に従わないときには、監督行政庁による営業停止の対象になります。一括下請負禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他の法令に違反した場合などには、指示なしで直接営業の停止を命じられることがあります。営業の停止期間は1年以内で監督行政庁が判断して決定します。

営業の停止期間中は新しい受注につながる行為は禁止されます。処分が長引けば会社の業績に直結し、従業員の生活にも影響がでるかもしれません。非常に厳しい処分といえます。ただし、すでに施工中の現場の施工管理をすることは認められています。

許可の取り消し

不正手段で建設業の許可を受けたり、営業の停止に違反して営業したりすると監督行政庁によって、建設業の許可の取消しがなされます。一括下請負禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他の法令に違反した場合などで、情状が特に重いと判断されると指示や営業の停止が命じられることなく、許可の取り消しとなります。
許可が取り消されれば、民間工事でも受注がままならず、公共工事については受注ができなくなります。発注者や地域からの信頼を裏切り、従業員の生活への影響も計り知れません。

 

処分の前の指導

監督処分という厳しい処置より前に、監督行政庁として違反をした建設業者に猶予の機会を与え、改善を促す行政指導の手続きも用意されています。違反の事実があり、監督行政庁から受け取った文書に「法41条による」旨の記載があれば、監督処分ではなくこの指導、助言および勧告であることを表しています。その時は経審でも減点の対象とはなりませんが、真摯に受け止めて改善に努めなければなりません。

(建設業法41条)
国土交通大臣又は都道府県知事は(中略)建設工事の適正な施工を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。

サッカーに例えてみると

やや乱暴な例えですが、指導と監督処分をサッカーに例えるならば、相手選手にタックルをした際に審判が笛を鳴らして試合を止め、選手に注意をしているのが「法41条の勧告」。タックルが危険であるため選手にイエローカードを示し手元で記録に残しているのが「指示」。悪質なタックルと見なして選手にレッドカードを示し退場をさせるのが「営業の停止」。選手としてチームとの契約が打ち切られ、もはや試合出場の機会がなくなるのが「許可の取り消し」というイメージでしょうか。

 

刑罰

建設業法に違反した場合、監督処分とは別に、罰則の適用があります。最も罰が重いのは、次の違反があった場合です。

1.無許可で建設業を営業した場合
2.特定建設業者でない者が一定金額以上の下請契約を締結して営業した場合
3.営業の停止に違反して営業した場合
4.営業の禁止に違反して営業した場合
5.虚偽または不正の手段で許可を受けた場合

上記の場合、3年以下の懲役、300万円以下(法人の場合には1億円以下)の罰金のいずれか又は情状により両方が科せられます。

 

まとめ

このように建設業法および関連する法令に違反した者には、厳しい処置が用意されています。
「そんな決まりがあることは知らなかった」
「みんな守っていないから大丈夫」
「お客さんに頼まれたんだから仕方がない」

建設業許可を取得し経審を受けている会社であれば、このような言い訳は許されません。クルマの運転と同じで、焦っている時ほど、落ち着いて、一旦停止。会社の将来を長い目で見て、よく考えてから決断をしてください。

 

スタッフ

建設業を営むためには様々な法令やルールを守らなければなりません。建設業にかかわるコンプライアンスに関する詳しい解説はこちら。

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この記事を書いた人

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塩﨑 宏晃

2003年行政書士登録。
建設業許可・経営審査業務の実務経験19年。
行政書士業務を通じて現場で働く方の縁の下の力持ちとなることがモットーです。
近年は建設キャリアアップシステム、特定技能ビザにも取り組んでいます。
お客様は一人親方、サブコン、地方ゼネコン、上場メーカーなど様々。
毎年200社以上のお客様と直接お会いし、ご相談を承っています。
2023年から申請のオンライン化が本格スタートしますので、
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