営業所の専任技術者は現場の配置技術者になれるのか

建設業法においては、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するため建設業許可やそれに伴う技術者の制度が設けられています。建設業許可業者となるための基本的な要件は次の6つです。

関連記事 建設業許可についての解説はこちら

みそらくん

この記事を読むと次のことがわかるようになるよ。

・専任技術者とは?
・監理技術者の配置義務の緩和について
・専任技術者の要件の緩和について

(1)経営業務の管理責任者の設置
(2)専任技術者の設置
(3)誠実性
(4)財産的基礎等
(5)適正な社会保険への加入
(6)欠格要件に該当しないこと

本日は専任技術者についてご案内していきます。

 

専任技術者とは?

建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、許可を受けようとする建設業に係る建設工事についての専門的知識が必要になります。見積、入札、請負契約締結等の建設業に関する営業は各営業所で行われることから、営業所ごとに許可を受けようとする建設業に関して、一定の資格または経験を有した者(専任技術者)を設置することが必要です。

専任技術者は会社に専属で勤務し、在籍する営業所の請負契約に関する見積もり、入札、契約締結等に関して技術的な専門知識を発揮する立場です。営業所でのデスクワークが主になります。専任技術者の設置は許可要件であるため許可を取得した後に専任技術者が不在となってしまうと、建設業許可の取消の対象となりますのでご注意ください。

建設業許可業者は、工事現場における施工所技術上の管理をつかさどる者として主任技術者(特定建設工事の場合は監理技術者)を配置しなければなりません。

また配置される工事が、公共性のある施設もしくは工作物または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事で、請負金額が4,000万円、建築一式の場合は8,000万円以上となる場合には、対象となる現場専任となります。現場専任なると、その工事期間に他の工事の配置技術者になることができません。たとえ建設業許可が不要である軽微な工事、請負金額100万円の現場であってもです。

ただし令和2年10月に施行された改正建設業法により、監理技術者の配置義務が緩和されました。

関連記事 専任技術者についての詳しい解説はこちら

 

 

監理技術者の配置義務の緩和について

当面は2つの現場に限られますが、監理技術者のもとに監理技術者”補佐”をおいた場合には、1名の監理技術者が専任が求められる2つの現場を兼務できます。監理技術者補佐は1級施工管理技士検定の一次に合格した者が対象になります。1次に合格をした方は技士補とも呼ばれます。

この技術検定についても、令和3年度から実務経験年数が緩和されています。2級施工管理技士に合格しているものは、実務経験を経ることなく1級の1次を受験することができるようになりました。

また1級の二次についても、監理技術者のもとで実務経験2年以上、または専任の主任技術者として実務経験1年以上が経過すると受験資格が得られます。

先ほどの”2現場兼務のための監理技術者補佐”として2年が経過すれば、そのかたが1級の2次検定を受験することができます。検定と実務経験のタイミングによりますが、2級の1次を受け始めてからおおよそ4~5年後ぐらいには、監理技術者となれる道が開けている、と考えてよいのではないでしょうか?

さて、建設業許可業者は、請負契約の内容を技術的観点から確認し、適正な契約の締結および履行の確保を担う技術者を、営業所ごとに配置しなければなりません。

こちらは”営業所の専任技術者”と呼ばれているものです。現場専任の主任技術者、監理技術者と混同しないように注意したいものです。比較的規模の小さい建設業許可業者は、営業所の専任技術者が現場を見なければとても回らない状況になることが多々あります。

私もお客様からよくご相談をいただきます。これについては、平成15年に通知文章(一部省略)が出ています。

———————————————————————————————————————————————————————————————–

工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡を取り得る体制にあるものについては、営業所の専任技術者が現場の主任技術者または監理技術者となった場合でも、営業所に常勤して専らその職務に従事しているものとして扱う。
(平成15年4月21日国総建第18号)

———————————————————————————————————————————————————————————————–

つまり、会社と現場がすぐに行き来できる場所にあれば兼務が可能です。会社と現場との距離、所要時間については、発注者の見解を確認した上で判断をしたほうが安全です。私見ですが、クルマで30分~1時間程度が目安ではないかと思います。

ただし4,000万円(建築一式8,000万円)以上の専任を要する工事のときは営業所専任技術者との兼務はできません。このように、営業所の専任技術者が現場の配置技術者になることができるケースは限られていますので、慎重な現場の運用が必要です。

 

 

専任技術者の要件の緩和について

一般建設業許可の営業所専任技術者の要件の緩和

《令和5年7月1日(土)施行》

■1級の第1次検定合格者を大学指定学科の卒業者と同等とみなす。
■2級の第1次検定合格者を高校指定学科の卒業者と同等とみなす。

実務経験による営業所専任技術者の要件は、原則10年であり、学歴で緩和する場合には大学卒で3年、高校卒で5年という緩和がされてきました。

今回の改正では、施工管理技士の一次検定に合格した方についても、その方の学歴に関わらず、一級施工管理技士なら大学卒業と同じ、二級施工管理技士なら高校卒業と同じ、というふうに認められます。

施工管理技士であれば7月1日から即、要件を満たす方が現れるわけですが、技士補の制度が始まったのは令和3年4月ですので、具体的に技士補での対象となる専任技術者が要件を満たすのは令和6年からになります。

経審(経営規模等審査)での加点については、7月1日以降の審査基準日から対象になります。実務経験10年をとうに過ぎていても、手続き上、これを書面で裏付けることは実務上はとても大変です。

許可行政庁が求める証拠書類、請負契約書、注文書、請求書等々の書類が10年以上に渡って事業者の手元に保管されていないことがあるからです。

なお指定建設業(土木、建築、電気、管、舗装、鋼構造物、造園)および電気通信については、本来、技術検定の二次まで合格しなければならない業種ですので、今回の改正の対象にはなっていません。

機械器具設置工事業の実務経験については、該当する工事の件数がそもそも少ない中ですので、今回の改正内容は、建設業許可の維持、営業の継続、専任技術者の交代、という意味において、とても意義深いものだと思います。 

 

専任技術者となるための実務経験年数は10年といわれます。ただし学歴によって年数が短くなります。学歴とは、具体的には許可を取りたい業種にあった学科を卒業していることです。指定学科を卒業していること+実務経験3年または5年ですが次のとおりです。

 1.高等学校 指定学科(全日のほかに、通信、定時含む):5年
 2.専門学校(専修学校専門課程):5年
 3.専門学校(専門士、高度専門士過程):3年
 4.高等専門学校:3年
 5.短期大学:3年
 6.大学:3年
 7.技士 又は 技士補(1級1次検定合格 対応種目):3年 ※令和5年7月1日施行
 8.技士 又は 技士補(2級1次検定合格 対応種目):5年 ※令和5年7月1日施行

  

指定学科とは?

例えばひとりの職人さんが仕事についてから15年間、塗装工事と防水工事に携わったとします。この2つの工事は並行して経験している訳ですが、建設業許可の審査となるとどちらか一方で10年間となるため、残りは5年しか経験がない、という解釈になります。

先に塗装の経験を優先した場合には、防水の実務経験を証明するのにあと5年先まで待たなければなりません。原則10年といいましたが、例外としては5年と3年があります。

これは許可を取ろうとする業種に関連している学科を高校や大学などで勉強したことを条件として、実務経験の年数を減らしてくれる制度です。学科については次のとおりです。

 

 土木工事業:土木工学、都市工学、衛生工学、交通工学
 舗装工事業:同上

 建築工事業:建築学、都市工学
 大工工事業:同上
 ガラス工事業:同上
 内装仕上げ工事業:同上

 左官工事業:土木工学、建築学
 とび・土工・コンクリート工事業:同上
 石工事業:同上
 屋根工事業:同上
 タイル・レンガ・ブロック工事業:同上
 塗装工事業:同上
 解体工事業:同上

 電気工事業:電気工学、電気通信工学
 電気通信工事業:同上

 管工事業:土木工学、建築学、機械工学、都市工学、衛生工学
 水道施設工事業:同上
 清掃施設工事業:同上

 鋼構造物工事業:土木工学、建築学、機械工学
 鉄筋工事業:同上

 しゅんせつ工事業:土木工学、機械工学

 板金工事業:建築学、機械工学

 防水工事業:土木工学、建築学

 機械器具設置工事業:建築学、機械工学、電気工学
 消防施設工事業:同上

 熱絶縁工事業:土木工学、建築学、機械工学

 造園工事業:土木工学、建築学、都市工学、林学

 さく井工事業:土木工学、鉱山学、機械工学、衛生工学

 建具工事業:建築学、機械工学

 

専任技術者になるためには次の①~③の要件を満たしている必要があります。

①10年以上の実務経験がある

②指定学科を卒業していて学科に応じた実務経験がある

③定められた国家資格等を取得している

関連記事 専任技術者になるための業種ごとの国家資格について

 

スタッフ

「経審の点数をより良くしたい…!」
「経審の点数を最適化して公共工事をより良い条件で受注したい…!」

無料ダウンロード 経審の見かたのポイントはこちらからダウンロードいただけます。

「経審の見方のポイント」ダウンロードフォーム

 
お申し込みいただいたメールアドレスにダウンロードURLと共に、経審の見方のポイント補足情報をメールにてお送らせていただきます。併せてご参照ください。

なお、入力いただいたメールアドレスは行政書士法人みそらのメールマガジンに登録されますが、当メールマガジンが不要になった場合はメール内のURLよりいつでも配信解除していただけます。
個人情報は厳重に管理し、外部に共有することはありませんので安心してご登録ください。

経審の見方のポイントPDF
でわかること

  • 経審通知書のチェックするべき項目
  • 経審点数をチェックし何をするのか?
  • 経審点数最適化のメリット
  • 評点の解説
    • P点
    • X1点
    • X2点
    • Z点
    • Y点
    • W点
  • 自社の目指すべきランクの考え方

この記事を書いた人

みそらスタッフ