損益計算書で使用される勘定科目入門

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建設業に従事されている皆さま、日々の業務においては、現場作業が中心となり、経理や勘定科目についてはあまり馴染みがないかもしれません。本日は、そのような皆さまにもぜひご理解いただきたい『損益計算書』についての、解説をさせていただきます。

今回は『入門編』として、各項目を簡潔にご解説しておりますが、『さらに詳しく知りたい』『この部分が理解しづらい』といったご質問やご不明点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。

 

①売上高について

完成工事高とは?

工事が完成し、売上として計上された金額です。完成の基準は一般的な完成基準と長期にわたる場合の進行基準のふたつがあります。

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兼業事業売上高とは?

建設業以外の事業(兼業事業)を併せて営む場合における当該事業の売上高をいいます。建設業で定められた29業種以外の仕事で売上を得ることを指し、建設工事以外での収入が兼業による売上となります。

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②売上原価について

完成工事原価とは?

完成工事高として計上したものに対応する工事原価をいいます。工事原価は、「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の、4つの要素で構成されています。

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兼業事業売上原価とは?

兼業事業売上高として計上したものに対応する兼業事業の売上原価をいいます。兼業事業による売上を得ている場合は、損益計算書に兼業事業売上原価を記載する必要があります。

 

売上総利益(売上総損失)とは?

売上高から売上原価を控除した額をいいます。売上高は、商品やサービスの販売で得た収入です。売上原価は、その商品やサービスを作るためにかかった費用のうち、実際に売れた分に対応するコストを指します。

 

完成工事総利益(完成工事総損失)とは?

完成工事高から完成工事原価を控除した額をいいます。完成工事高は、工事による売上を指し、完成工事原価はその工事にかかったコストです。完成工事総利益とは、売上からコストを差し引いた粗利益のことをいいます。

 

兼業事業総利益(兼業事業総損失)とは?

兼業事業売上高から兼業事業売上原価を控除した額をいいます。建設業を営む会社が建設業以外の事業(兼業事業)を併せて営む場合に、その兼業事業の売上高から売上原価を差し引いた金額です。

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③販売費及び一般管理費について

役員報酬とは?

取締役、執行役、会計参与又は監査役に対する報酬をいいます。(役員賞与引当金繰入額を含みます。)

役員とは、従業員ではなく経営陣としての役割を果たす人たちを指します。社内外問わず、役員に支給される報酬は「役員報酬」となり、支給頻度が少なくても該当します。

 

従業員給料手当とは?

営業や事務などに従事する方の給料や手当です。工事現場に直接従事する方の給料や手当は完成工事原価になります。

 

退職金とは?

役員及び従業員に対する退職金をいいます。(退職年金掛金を含みます。)ただし、退職給付に係る会計基準を適用する場合には、退職金以外の退職給付費用等の適当な科目により記載をします。

 

法定福利費とは?

企業が法律に基づいて従業員に対して提供する保険や費用のことをいいます。具体的には、健康保険、厚生年金保険、労働保険等の保険料の事業主負担額及び児童手当拠出金などが挙げられます。

 

福利厚生費とは?

慰安娯楽、貸与被服、医療、慶弔見舞等福利厚生等に要する費用のことをいいます。

 

修繕維持費とは?

固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産について原状を回復するために要したと認められる部分の金額をいいます。具体的には、建物、機械、装置等の修繕維持費及び倉庫物品の管理費等が挙げられます。

 

事務用品費とは?

事務用消耗品費、固定資産に計上しない事務用備品費、新聞、参考図書等の購入費をいいます。

具体的には、ノート、ボールペン、はさみ、ファイル、付箋、コピー用紙、封筒、社保用紙、小切手帳、出勤簿、納品書、領収書、名刺などが挙げられます。

 

通信交通費とは?

通信費、交通費及び旅費をいいます。

通信費:電話代、データ通信料金、郵便代など
交通費:通勤のための定期券の費用や、業務における近距離の移動にかかる運賃やタクシー代など
旅費:出張の際にかかる運賃、高速道路の料金、宿泊費、日当など

 

動力用水光熱費とは?

電力、水道、ガス等の費用をいいます。光熱費には、電気料金、ガス料金、水道料金、冷暖房に使う燃料などの料金などが含まれます。

 

調査研究費とは?

技術研究、開発等の費用をいいます。研究開発費は、新製品や新技術の開発、または既存製品の改良に使用される勘定科目です。この費用には、人件費、原材料費、設備費などが含まれます。

 

広告宣伝費とは?

広告、公告又は宣伝に要する費用をいいます。具体的には、「新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどの広告費用」「インターネット広告やホームページ作成費用」「屋外広告や交通広告(ポスターや中吊り広告など)」が挙げられます。

 

貸倒引当金繰入額とは?

営業取引に基づいて発生した受取手形、完成工事未収入金等の債権に対する貸倒引当金繰入額をいいます。貸倒損失が実際の損失額であるのに対して、貸倒引当金繰入はあくまでも見積りであるのが特徴です。

 

貸倒損失とは?

営業取引に基づいて発生した受取手形、完成工事未収入金等の債権に対する貸倒損失をいいます。代表的な例として、取引先が倒産したり、債務超過に陥った場合に回収不能になるケースが挙げられます。

 

交際費とは?

得意先、来客等の接待費、慶弔見舞及び中元歳暮品代等をいいます。支出した交際費のうち、損金として認められる範囲は限定されています。

 

寄付金とは?

社会福祉団体等に対する寄付をいいます。寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与をいいます。

 

地代家賃とは?

事務所、寮、社宅等の借地借家料をいいます。事業に必要な事務所や倉庫、店舗、駐車場などは、「地代家賃」として経費に含めることができます。

 

減価償却費とは?

減価償却資産に対する償却額をいいます。建物や車両、建築物、機械設備などの固定資産を購入した際、その費用を一度に損失として処理するのではなく、資産の耐用年数にわたって少しずつ価値が減少していくものと見なして、毎年段階的に経費として計上する方法を指します。

 

開発費償却とは?

繰延資産に計上した開発費の償却額をいいます。開発費の償却期間は5年以内とされています。

 

租税公課とは?

事業税(利益に関連する金額を課税標準として課されるものを除きます)、事業所税、不動産取得税、固定資産税等の租税及び道路占用料、身体障害者雇用納付金等の公課をいいます。

建設工事請負契約書に貼付する収入印紙なども租税公課で計上します。(購入した印紙を保管する場合は、購入時に租税公課で計上し、未使用分は決算時に貯蔵品で処理します。)

 

保険料とは?

災害に使う、損害保険、法定外労災保険などの損害保険料をいいます。法人が役員や従業員を被保険者とする掛け捨ての保険料を支払った場合に使用する科目です。

 

雑費とは?

社内打合せ等の費用、諸団体会費並びに他の販売費及び一般管理費の科目に属さない費用をいいます。他の経費にあてはまらない、重要度の低い少額の経費を処理する際に使います。

 

営業利益(営業損失)とは?

粗利である売上総利益(売上総損失)から販売費及びに一般管理費を控除した額をいいます。完成工事高や兼業売上高から得た利益を示します。「本業での儲け」と言われるものです。

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④営業外収益について

受取利息及び配当金とは?

受取利息とは?

預金利息及び未収入金、貸付金等に対する利息をいいます。ただし、有価証券利息に属するものは除きます。利息は収益ではありますが、通常の営業活動により生じたものではないため、原則として営業外収益として計上します。

有価証券利息とは?

公社債等の利息及びこれに準ずるものをいいます。具体的には国債や地方債、社債などの債券から発生する利息を指し、会計上では営業外収益に分類されます。

受取配当金とは?

株式利益配当金をいいます。投資信託収益分配金、みなし配当を含みます。株式の配当金は源泉徴収されるため、処理するときは控除された税金もあわせて計上します。

 

その他とは?

有価証券売却益とは?

売買目的の株式、公社債等の売却による利益を含みます。売却し、売却価額が帳簿価額を上回った場合に、その差額を計上します。

雑収入とは?

他の営業外収益科目に属さないものをいいます。スクラップ、廃材の売却収入などがありますが、事業目的の範囲内であれば兼業売上高に計上することもできます。

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⑤営業外費用について

支払利息とは?

支払利息とは?

借入金利息等をいいます。(金融機関からの借入利息、他の会社からの借入金利息、社債利息など)利息だけであり、元本の返済は計上されていませんのでご注意ください。

社債利息とは?

社債及び新株式予約権付社債の支払利息をいいます。社債は、企業が資金調達のために発行しますが、その社債を購入した社債権者に利息を支払った際に使用する科目です。

 

貸倒引当金繰入額とは?

営業取引以外の取引に基づいて発生した貸付金等の債権に対する貸倒引当金繰入額をいいます。金銭債権を回収できない可能性がある場合に、期末に金銭債権の評価を行い、貸倒れの見積金額を計算し、貸倒引当金繰入額として計上します。

 

貸倒損失とは?

営業取引以外の取引に基づいて発生した貸付金等の債権に対する貸倒損失をいいます。貸付金等が回収不能になる原因としては、取引先の倒産や債務超過などが挙げられます。

 

その他とは?

創立費償却とは?

繰延資産に計上した創立費の償却額をいいます。創立費は、会計上5年で均等償却することとされていますが、任意であるため、各年で経費にする金額を自由に決めることができ、一括で償却を行うことも可能です。

開業費償却とは?

繰延資産に計上した開業費の償却額をいいます。開業費は、会計上5年で均等償却することとされていますが、任意であるため、各年で経費にする金額を自由に決めることができ、一括で償却を行うことも可能です。

株式交付費償却とは?

繰延資産に計上した株式交付費の償却額をいいます。株式交付費は、株式会社による新株発行、もしくは自己株式の処分にかかった費用を指します。償却期間を3年以内に定めて会計処理を行います。

社債発行費償却とは?

繰延資産に計上した社債発行費の償却額をいいます。社債は通常、年単位で発行されますが、なかには数十年以上の長期債が発行されることもあります。しかし実務上は3年間をめどに償却します。

有価証券売却損とは?

売買目的の株式、公社債等の売却による損失をいいます。有価証券の売却価額が帳簿価額を上回る場合は「有価証券売却益」、売却価額が帳簿価額を下回る場合は「有価証券売却損」として計上されます。

有価証券評価損とは?

会社計算規則第5 条第3 項第1 号及び同条第6 項の規定により時価を付した場合に生ずる有価証券の評価損をいいます。売買目的で保有している有価証券が、期末時点で帳簿価額より時価が低い場合に、有価証券評価損を計上します。

 

経常利益(経常損失)とは?

営業利益(営業損失)に営業外収益の合計額と営業外費用の合計額を加減した額をいいます。経常利益は、企業が毎年どれくらい稼げるかを示す大事な指標のひとつです。

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⑥特別利益について

前期損益修正益とは?

前期以前に計上された損益の修正による利益をいいます。ただし、金額が重要でないもの又は毎期経常的に発生するものは、経常利益(経常損失)に含めることができます。

 

その他とは?

固定資産売却益、投資有価証券売却益、財産受贈益等異常な利益をいいます。ただし、金額が重要でないもの又は毎期経常的に発生するものは、経常利益(経常損失)に含めることができます。

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⑦特別損失について

前期損益修正損とは?

前期以前に計上された損益の修正による損失をいいます。ただし、金額が重要でないもの又は毎期経常的に発生するものは、経常利益(経常損失)に含めることができます。

 

その他とは?

固定資産売却損、減損損失、災害による損失、投資有価証券売却損、固定資産圧縮記帳損、損害賠償金等異常な損失をいいます。ただし、金額が重要でないもの又は毎期経常的に発生するものは、経常利益(経常損失)に含めることができます。

 

税引前当期純利益(税引前当期純損失)とは?

経常利益(経常損失)に特別利益の合計額と特別損失の合計額を加減した額をいいます。企業が1年間に得た収入から税金(法人税・法人市民税・法人県民税など)以外のすべての費用を除いた利益です。

 

法人税、住民税及び事業税とは?

当該事業年度の税引前当期純利益に対する法人税等の額並びに法人税等の更正、決定等による納付税額及び還付税額をいいます。「法人税等」とは、法人税、住民税及び利益に関する金額を課税標準として課される事業税をいいます。

 

法人税等調整額とは?

税効果会計の適用により計上される法人税、住民税及び事業税の調整額をいいます。会社が上げた利益である会計上の利益と税務で計算する税務上の課税所得には、差が生じることがあり、それを調整するのが法人税等調整額です。

 

当期純利益(当期純損失)とは?

税引前当期純利益(税引前当期純損失)から法人税、住民税及び事業税を控除し、法人税等調整額を加減した額をいいます。一定の期間における会社の最終的な利益で、会社の業績を示す代表的な財務数値です。

今回は『入門編』として、各項目を簡潔にご解説しておりますが、『さらに詳しく知りたい』『この部分が理解しづらい』といったご質問やご不明点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。

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